都市への 人口集中,高齢化,地球温暖化,国際化など,現代社会が抱える課題は量的,質的両面から水循環系に多大な影響を与えると共に,これらの課題は水循環系に潜 在する病原微生物による健康リスクを増大させる要因でもあります。このような課題に対して,現在の感染症流行抑制策は非常に脆弱であり,安全で安心な水利用を 期待する人々に社会的不安をもたらしているのが現状です。
感染性胃腸炎を引き起こす病原微生物の多くは,感染者の屎尿を介して下水中に排出されています。その ため,下水中の病原微生物濃度は,その地域での消化器系感染症の発生状況を反映しています。したがって,下水を含む水環境中の病原微生物濃度を日常的に監視し,これがある一定の濃度を超えた場合に速やかに情報を発信し社会の対応を促すことで,感染症拡大をできる限り早期に食い止め,感染症の流行を 抑制することができるのではと考えました。
本研究のねらいは,水監視による新しい感染症流行検知システムの開発を通じて,頑健な水循環系の形成と健康リスク回避のための新たな水利用システムを構築し,社会的要請に応えられ得る望ましいシステムとして社会に定着させることにあります。
なお本研究は、平成29年度下水道応用研究(国水総第315号)として国土交通省より委託された「流入下水中の病原ウイルス観測による総合的感染症流行防止対策の確立」により遂行されています。