ノロウイルスのエタノール消毒効果について

 
 

本年、2月14日(水)に、仙台市小学校教育研究会保健教育研究部会の御好意により、ノロウイルス水質情報発信システムの紹介をさせて頂きました。紹介後に参加されていた先生から、情報システムでは予防対応について厚労省などが推奨する従来の次亜塩素酸消毒ではなく、エタノール消毒を推奨しているがどうしてかとの質問を受けました。その回答として、ノロウイルスに対してエタノール消毒が有効であるとの新しい知見を得ていたことから推奨に至ったこととしました。しかしながら、改めて消毒に関する知見を精査し、ノロウイルス水質情報システムでその解答を報告させていただくこととしました。2月14日から1ヶ月半が経過してしまいましたが、本日下記のようにご報告させていただくとともに、消毒に関する記述を訂正させていただくことにしました。御理解いただければ幸いです。

『細菌をよく殺菌するエタノールに関し、ノロウイルスに対しては全く効果がないと考えられてきました。これは、ノロウイルス以外の類似のウイルス、例えばポリオウイルスなどが、エタノールに対して抵抗性を持っていることから、ノロウイルスもエタノールに強いだろうと考えられてきたからです。しかしながら、近年の研究では、次亜塩素酸だけでなく、エタノールもノロウイルスの消毒に使用できるのではないかと考えられる研究成果が得られてきています。例えば、ヒトに感染するノロウイルスと非常に似ているマウスノロウイルス、ネコカリシウイルス、及びチュランウイルス(サルノロウイルス)は、全てエタノール感受性である(エタノールによって不活化する)ことが報告されています。また、ヒトに感染するノロウイルスも、70%エタノールで処理することにより99%程度の消毒効果があると報告されています(Park et al., 2016, PLoS ONE, 11(6): e0157787)。しかしながら、最も大きな被害を出している遺伝子型であるGII.4型に関しては、遺伝系統によってエタノールへの応答が異なり、Sydney株にはやはり99%程度の消毒効果があるものの、New orleans株にはほとんど消毒効果がないことも同時に報告されています。ただ、近年のノロウイルス流行株はSydney株が一般的であることと、エタノールがより取り扱いやすい消毒剤と判断したことから情報システムではエタノールを推奨致しました。以上のことをまとめますと、次亜塩素酸以外にも、エタノールもノロウイルスの遺伝系統によっては消毒効果があることから、吐物等で身の回りが汚染された際、近くに次亜塩素酸系消毒剤がなくてもエタノール系消毒剤がある場合、及び次亜塩素酸系消毒剤の刺激が強すぎて使えない場所を消毒したい場合には、エタノール系消毒剤を用いて拭き掃除等行うことが効果的と考えます。従って、情報システムには「次亜塩素酸消毒を主として、次亜塩素酸消毒で対応できない場合はエタノール消毒での対応が可能である。」とさせて頂きます。』

 
 

感染予防対策

1.手洗いをよく行う。  
ノロウイルスに感染した人の手を介して感染が拡大する場合があります。トイレの使用後、オムツ替えの後、調理を行う前などによく手洗いをしてください。

2.食べ物をよく加熱する。  
ノロウイルスはカキなどの二枚貝(貝殻2枚で身を覆っている貝)の体内に蓄積されやすいことが知られています。二枚貝を食べる際には、十分に加熱するようにしてください。十分な加熱は、調理の内容によって異なりますが、身の中心部まで熱がしっかり通ることが目安です。

3.ドアノブ、イスなど、手で触れる場所を消毒する。  
ノロウイルスに感染した人が触れたドアノブなどを介して感染が拡大する場合があります。家庭内で手でよく触れる場所をアルコールなどでよく拭いてください。

4.キッチンや調理器具を消毒する。  
ノロウイルスに感染すると、症状が出る前から排出され始めます。下痢や熱などの症状がなくてもノロウイルスに感染している人が調理をすると、食事をした人に感染する可能性が出てきます。キッチンや調理器具をこまめに(熱湯やアルコールなどで)消毒してください。

 
 

その他、衛生対策に関するより詳細な情報は以下のサイトをご覧下さい。

ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省) 

ノロウイルス感染症(国立感染症研究所・感染症情報センター)

ノロウイルス(感染性胃腸炎・食中毒)対策〜冬は特にご注意を!〜(首相官邸)